鳥取県内の測量設計業者が、かつてない経営の危機に直面している。2026年(令和8年)7月27日、一般社団法人鳥取県測量設計業協会(大西幸人会長)は、平井伸治鳥取県知事に対し「地域インフラを支える業界の持続に向けた事業量・予算拡大に関する緊急要望書」を提出した。要望の場には協会役員および顧問を務める野坂道明県議会議員らが同席し、物価高騰や人件費上昇により苦境に立たされている業界の深刻な実態を報告するとともに、補正予算の確保や事業量の根本的拡大を強く求めた。
【「企業努力の限界を超えている」~重くのしかかるコストと投資負担】
同協会が提出した要望書によると、近年全国的に5%前後の賃上げが続く中、人口最少県である鳥取県においても人材確保と都市部への人材流出を防ぐため、継続的な賃上げ対応が不可避となっている。しかし、現在の事業量や予算規模ではこうしたコスト上昇を吸収することは極めて困難であり、すでに企業努力のみで維持できる段階を超えているという。
とりわけ深刻なのが、地方と都市部との賃金格差の拡大だ。令和7年度の地域別最低賃金は鳥取県で1,030円であるのに対し、東京都は1,226円となっており、若手人材の都市部への流出に歯止めがかからない状況にある。
さらに、国や県が推進するインフラDX(デジタルトランスフォーメーション)やBIM/CIMへの対応も業界に重くのしかかっている。3次元点群データ活用などに伴い、高性能なPCや関連CADソフトへの投資が不可欠となっているが、わずか数ヶ月の間に5割を超える価格上昇が発生するなど、設備投資負担が急激に増加しているのが実態だ。
【現場の声「市町村の仕事が減少」「災害対応への不安」】
こうした業界の構造的な窮状は、現場の最前線でも肌感覚として共有されている。あるコンサルタント営業担当は、「令和6年頃から、市町村からの見積もり依頼が目に見えて減ってきた」と、地方自治体の予算縮小がもたらす直接的な影響を指摘する。
また人材不足に関連して「技術者の高齢化が進んでおり、今後の災害対応などに不安を感じている」と語る。測量・設計業務は、道路、橋梁、河川、砂防といった社会インフラ整備や防災・減災対策の土台を担う基盤産業である。その担い手が不足することは、そのまま建設業全体の弱体化を促し、地域の防災力やインフラ維持能力の低下に直結する。
同協会も要望書の中で、このままでは「発注しても受け手がいない」という事態が現実化すると強い懸念を示しており、個別企業の経営問題にとどまらず、地域インフラの維持体制そのものが崩壊しかねないと警鐘を鳴らす。
【業界が求める3つの緊急対策】
このような危機的状況を打開するため、協会は県に対し以下の3点を強く要望した。
1. 測量・設計等基盤業務の予算総枠の増額・確保、発注量の拡大および継続的確保
地域企業が持続可能な経営を行えるよう、公共事業の予算総枠を増額し、発注量を拡大・継続すること。
2. 物価・人件費上昇、DX化・BIM/CIM対応経費の積算基準等への適切な反映と予算規模の抜本的な見直し
発注段階から設備投資や技術対応費用が適切に反映されるよう、積算基準を抜本的に見直すこと。
3. 地域インフラ維持を支える人材確保・育成のための中長期かつ安定的な発注体制の構築
将来のインフラ維持を支える人材を育成できるよう、公共事業の平準化と中長期的な発注体制を構築すること。
要望書の結びにおいて、同協会は「現場は既に限界に達しており、今後数年間の対応が、地域産業および地域インフラ維持体制の存続を左右する局面にあります」と声を挙げた。県民の安全・安心な暮らしを守るため、行政側には早急かつ実効性のある対応が求められている。