2026年7月28日に発生した熊本地震は最大震度7の激震により多くの尊い人命が失われ、無数の住宅が倒壊する甚大な被害をもたらした。被災された方々、犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表したい。
同時に、この未曾有の災害は「明日は我が身」という強い警鐘を私たち山陰地方に鳴らしている。仮に鳥取県東部で熊本地震と同等規模の直下型地震が発生した場合、どのような被害が想定されるのか。そして地域に漂う「東部は当分安全」という言説の真相は信頼できるのか。過去の危機管理データと地震学の最新知見から検証する。
住宅倒壊「4,000棟」の衝撃――鳥取県被害想定の真実
鳥取県危機管理課が策定・公表している災害対策アクションプランや被害想定データによると、県内を震源とするマグニチュード(M)7級の直下型地震が発生した場合、全壊(倒壊)する住宅の数は「約4,000棟」に上ると試算されている。
熊本地震でも明らかになったように、1981年以前の「旧耐震基準」で建てられた木造住宅を中心に瞬時に全壊し、圧死や閉じ込めによる多数の死傷者が発生するリスクが高い。さらに山陰特有の狭隘な道路網や古い街並みでは、住宅の倒壊が緊急車両の通行を阻み、救助活動や火災消火の遅れに直結する懸念も指摘されている。10年前の試算とはいえ、耐震化が完了していない住宅が残る現状では、依然として現実味を帯びた脅威である。
「昭和18年の大震災で1000年は安全」は危険な誤解
一方で、県東部には「昭和18年(1943年)の鳥取大地震(M7.2)でエネルギーが完全に放出し尽くされたため、向こう1000年は大地震が起きない」と表明する専門家も過去に存在した。しかし、最新の事例によれば、専門家や地震学者はこの言説に対し「極めて危険な誤解である」と強く警鐘を鳴らす。
確かに、昭和18年の地震を引き起こした「鹿野断層」「吉岡断層」そのものが、再びM7級の地震を起こすまでには数百〜数千年の間隔を要すると考えられている。しかし、問題は「断層はそれだけではない」という点だ。
近年の地震学では、山陰地方には地表に現れていない「活断層(隠れ断層)」が密に網の目状に存在することが判明している。実際、2000年の鳥取県西部地震(M7.3)や2016年の鳥取県中部地震(M6.6)は、いずれも「それまで知られていなかった未知の断層」が突如動いたことで発生した。
つまり、昭和18年の地震によって特定の断層のエネルギーは消費されたとしても、周辺にひしめく他の未知の断層群のエネルギーまで解消されたわけではないのである。「鳥取東部は1000年安全」という油断こそが、最大の防災の死角となり得る。
命を守るために今できること
熊本地震の教訓は、「明日、自分の足元で大地震が起きてもおかしくない」という前提に立って備えることの大切さを教えている。
住宅4,000棟倒壊という最悪のシナリオを現実のものにしないためには、個人の住宅耐震補強、家具の固定、非常用備蓄の確保をはじめ、急傾斜地崩壊対策や緊急時の道路網整備が不可欠だ。過去の歴史に過信することなく、正しく恐れ、備える姿勢が今、鳥取県東部の私たちに強く求められている。