岩美町農林水産課によると、河崎地内にある2つの防災重点農業用ため池「河崎越路堤」と「二本松ため池」について、それぞれ異なる方針で対応するという。廃止と存続だ。
8月27日に開催された岩美町議会全員協議会で、地元集落から「二本松ため池は廃止、河崎越路堤は農業用水として存続を希望する」要望書が提出されたことが報告されており、町はこれを受け対応を進めていく予定だ。
【防災重点農業用ため池とは】
「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」第4条第1項に基づき、決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設等が存在し、人的被害を与える恐れがあるものとして都道府県知事が指定するため池のこと。指定基準は以下のいずれかに該当するものだ。
①ため池から100m未満の浸水区域内に住宅等があるもの
②ため池から100m以上500m未満の浸水区域内に住宅等があり、かつ貯水量が1,000㎥以上のもの
③浸水区域内に住宅等があり、かつ貯水量が5,000㎥以上のもの
河崎越路堤(貯水量18,000㎥)、二本松ため池(貯水量3,000㎥)とも、この基準に基づき指定されている。地図で見ると、河崎越路堤は河崎地区の東側の山林部に、二本松ため池は上河崎の集落に近い位置にそれぞれ立地している。

【河崎越路堤:老朽化した底樋、県営事業での改修を要望へ】
河崎越路堤は木製150×150mmの底樋断面を持つが、現在は老朽化により閉塞している状態だ。写真では堤体自体は緑豊かな環境にあるものの、底樋部分の老朽化が進んでいる様子がうかがえる。
国は令和12年度までを集中期間として、不要なため池は廃止、存続するため池については危険度に応じて順次改修するよう、県を通じて自治体に判断を求めている。県が行った調査では、河崎越路堤は劣化、豪雨・地震耐性評価の結果が不良とされ、存続させる場合は県営事業での実施も可能との申し入れがあったという。
町はこれを受け、鳥取県に対し県営事業での事業執行を要望し、地元集落に対しても事業への協力を依頼したい考えを示している。想定されている事業の概要は以下の通り。

〇事業名=農村地域防災減災事業(防災重点農業用ため池緊急整備事業)
事業主体=鳥取県
概算事業費=2億円(県内同規模の改修事業を参考に算定)
負担区分=国55%、県34%、町11%
交付税措置=町負担11%は公共事業債(充当率90%、農業農村・防災重点農業用ため池分)として借り入れ、後年度元利償還金の45%が交付税措置される。
【スケジュール(案)】
〇令和8年度=計画策定:地元自治体等の意向確認
〇 令和9年度=計画策定(町負担無し)、土地改良法手続
〇令和10年度=実施設計(2500万円)
〇令和11年度=整備工事(7500万円)
〇令和12年度=整備工事(1億円)
概算事業費2億円のうち設計2500万円、工事1億7500万円という配分で、令和12年度までの複数年にわたる計画。
【二本松ため池:国負担100%で廃止事業として実施】
一方、二本松ため池については、今後県を通じて国に廃止に係る計画書を提出し、国負担100%での廃止事業として進める予定。地元集落からの廃止希望を受けた形で、町としても存続よりも廃止の方向で手続きを進める考えだ。なお、廃止後の跡地の翌年度以降の事業化については、改めて地元と相談するとしている。
写真を見ると、二本松ため池は水面が茶褐色に濁っており、周辺の樹木が水面近くまで生い茂っている様子が確認できる。貯水量3,000㎥と河崎越路堤に比べて小規模であることも、廃止という判断につながった要因の一つと推測できる。
【2つのため池、明暗を分けた要因】
同じ河崎地内にありながら、河崎越路堤と二本松ため池で対応が分かれた背景には、まず地元集落自身の意向の違いがある。河崎越路堤は農業用水として引き続き利用する必要があるとして存続が希望された一方、二本松ため池は廃止が希望された。
加えて、貯水量の差(18,000㎥対3,000㎥)も、決壊時の浸水被害想定や改修の必要性の判断に影響している可能性がある。防災重点ため池としての指定基準自体が貯水量を重要な要素としていることからも、規模の違いが今後の対応の分かれ目になったことがうかがえる。
いずれにせよ、老朽化した農業用ため池をめぐっては、「改修して存続させる」か「廃止する」かという二者択一を、国の集中期間(令和12年度まで)という期限の中で地元自治体・集落が判断していく必要に迫られている。今回の河崎地内の事例は、その典型的なケースといえるだろう。