
2018年(平成30年)に一般公開を開始した国指定重要文化財・旧美歎水源地水道施設の運営状況や今後の課題についてまとめた。というと大げさですが、なんとなく贔屓にしている施設です。
【経過】
旧美歎水源地の復元について説明すると、1978年(昭和53年)に運用停止し、その後、20年近く放置され施設内は雑草が生い茂り、上流の貯水ダムをはじめ水道施設の劣化・崩壊が始まった。1990年代後半には解体撤去の話が持ち上がったのだが、これは上流に位置する貯水ダムの経年劣化を問題視したためだ。運用を始めた大正時代には、ダム崩落により犠牲者も発生した。危険な施設をこのまま放置するわけにはいかない。
そのような情勢により施設は9割9分解体するものとみられていたのだが、ここで故坂野重信参議が登場する。坂野参議は「美歎水源地は、山陰地方でも最古の水道施設だ。歴史あるこの施設を解体してはいけない」と指示した。いわゆる「鶴の一声」のおかげで、一転保存・復元が決まった。
たしか「都市砂防事業」という聞きなれない補助事業を導入したことで、堰堤の補強費約10億円(だったと思う)の大半を国が負担した。坂野参議の尽力が無ければ実現できない大型事業だったのだ。
ダム補強工事は、地元の栗山組が中心になって施工したように記憶している。当時は文化財では無かったため地元業者が参加できた。その後、水道施設は鳥取市文化財課の所管となり、約3億円をかけて復元し2018年に一般公開を始めた。
【問題点】
問題点というと大げさだが、列挙すると
①イベント開催時に駐車場がすぐ満車になる。
②駐車場に隣接する受付棟がやや手狭な印象。やむを得ないとは思うが、外観も凡庸で水道施設と整合したデザインではない。隣接するトイレは微生物が汚水処理するバイオトイレだが、剥き出しの外観は残念。
③貯水ダムは5~6年前から藻が繁殖するようになった。上流に牧場ができた頃とおおむね一致するのだが、調べてみると汚水の水質基準はきっちりクリアしている。とはいえ、なんらかの原因により窒素やリンなどが増加し富栄養化が始まっている。
【集客】
公開当初は知名度の低さや人里離れた山間にあったことで、閑古鳥が鳴いた。その後、地元保存会のみなさんの地道な活動により年々来訪者が増え、令和3年度は年間4万人を集客。今年4月の桜の開花時期には10日間で4000人が訪れた。
また、今回初めて取り組んだ無料の抹茶サービスは約1000杯と予想をはるかに上回った。「100円でも200円でもいいから料金を取ればいいのに」と思ったのだが、保存会は「素人の抹茶でお金を受け取るわけには」と控えめだ。私なら1杯500円ぐらい取る。500円なら1000杯で50万。地元にとってはいい励みになると思うのだが。
それはさておき、保存会が企画する年間行事も充実している。前述したように4月の桜、6月のホタル観賞、7~8月は美歎川親水公園での水遊び、9~10月の紅葉などだ。今年は100周年ということもあり、文化庁が補助する「プロジェクションマッピング」も計画中だ。
大きなイベントも楽しみだが、美歎水源地の魅力は、朝晩のジョギングや散策、週末のサイクリングなど、それほど大勢の人が来るわけではないが「常連」と呼ばれる人がじわじわ増えていることだ。派手さはないが、確実に地域に根付き、親しまれている。
つくづく、保存して良かったと思える文化財だと思う。
余談だが、土日のイベントなどに「キッチンカー」を募集する考えもあるそうだ。問い合わせは鳥取市文化財課にお気軽に。
(旧美歎水源地の桜。4月上旬撮影)