計画・構想

「田んぼでスマホ充電」 微生物発電「1反で月4600kw売電可能」

投稿日:2021年08月14日 05:02 更新日:

 昔、「土俵にカネが埋まっている」と相撲力士が名言を吐いたものだが、これからは「耕作放棄地に電気が埋まっている」時代が到来する。それもかなり近い将来にだ。

 今春から鹿野町の水田でスタートした微生物発電の基礎実験で、想定を上回る発電量を計測したことから、実験に使う水田面積を大幅に増加させるなど実用化に向けた「実証試験」を9月から始めることが決まった。これに伴い、鳥取市が1000~1500万円を補助する見通しで、9月市議会に予算化を諮る。

【微生物発電の特長】
 今回の基礎実験で明らかになった微生物発電の特長は、

①発電能力は水田1反(300坪)で4人家族10世帯分の電力を発生。
②水と土があれば、基本的にどこでも発電可能。水田をはじめ耕作放棄地やため池、休耕田、また公共下水道や農業集落排水処理施設で発電できる。
③中山間地の耕作放棄地に貯水すれば、発電しながら治水ダムとして機能し、また里山に新たな水環境を創出することで鳥獣害を軽減できる。
④元々、電気が通っていない発展途上国用の発電施設であり、低コストでメンテナンスも容易。また原子力や火力、水力、風力などと比較して圧倒的に環境負荷は少ない。
~以上の潜在能力を有しているようだ。

 これまでの経緯など紹介する。

【発電システム】
 発電システムは、山口東京理科大学電気工学科の森田廣教授が開発。昨年(2020年)1月に特許出願したもので、もともと、バクテリア(微生物)が糞尿などの有機物を分解する際に電気を発生させることはかなり以前から知られていた。
 しかし、発生する電気が微弱なため「実用化は困難」という認識が主流だった。

 ところが、砂漠など乾燥地農業に使われている保水性の高いガラス発泡材(微細な穴を持つ活性炭のような構造)の内部に、非常に多くの微生物が密集する現象を発見。さらに密集した状態なら極めて高い発電能力を有することが明らかになった。
 森田教授は、このガラス発泡材(多孔質材料)の組成を改良し、微生物の発電能力を大幅に高めることに成功した。

【製造システム】
 ガラス発泡材を製造するのは、東伯郡北栄町東園583番地の㈱鳥取再資源化研究所(代表取締役 竹内義章)で、開発拠点は国立大学法人鳥取大学内。
 同社はこの発泡材を「ポーラスα」と命名し、すでにモロッコなど海外でも販売しているほか、中部管内で発生する廃ガラスを全て回収し発泡材の原料として活用している。リサイクルにも貢献する企業だ。

 前述した通り、乾燥地の土壌の保水性を高めるための土壌改良が本来の目的であり、鳥取市乾燥地センターらと連携して技術開発を進めていたものだが、思わぬ副産物として微生物発電のカギを握ることになった。

【実験結果など】
 令和3年4月、森田教授は山口東京理科大学を退官し、鳥取再資源化研究所へ移籍。微生物発電の実用化に向けた研究を加速させることになった。同4月から鹿野町鹿野の休耕田(10m×10m)で始めた基礎実験は順調に進み、おおむね1反(300坪・991㎡)の水田で4人家族10世帯分の電力を発生することが分かった。発電量は月4600kwh程度か。1世帯の電気代を月1.2万円と想定すると、月12万円を稼ぎ出すことになる。中山間地に広がる膨大な耕作放棄地が「カネの埋まった土俵」に変わるのだ。(注:当初月2万円で換算しましたが、通産省のHPを確認したところ、4人家族の平均電気代は1.2万円/月とありましたので訂正します)。

【問題点】
 水田を使う以上、冬季(12月~3月ごろ)は発電能力が著しく低下する。安定した電力供給に難があるとはいえ、蓄電池などに充電する方法がある。個体電池といった優れた蓄電システムの実用化も近づいている。
 また、既存の公共下水道、農業集落排水施設でも微生物発電が可能なことが確認されており、汚水処理施設の改修により、冬場の電力供給を安定化することは可能だろう。

 そのほか、稲作用の水田で発電可能だが、現時点では発泡材の配置などにより「田植機を持ち込めない」というネックがある。水田で発電した電力をどのように送電するのかも課題だろう。

【今後の予定】
 今後の鳥取再資源化研究所の動静だが、まず微生物発電に係るノウハウを広く普及させることになると推測している。休耕田などの再生と、発泡材の設置場所、水量、温度管理などをセミナー形式で講義し人材を増やす。そのため、鳥取市に働きかけ鹿野町にセミナーハウスを整備するかもしれない。いずれにしても、今回の発電事業は鹿野を発端に、まず鳥取県東部と但馬地方に拡大する。

 中山間地に急速に拡大した耕作放棄地や休耕田が、エネルギー問題の解決に大きな影響を与えることになった。治水ダムとして災害対策にも貢献し、ビオトープを形成することで鳥獣害を軽減するだろう。

 とりあえず、電力会社がエネルギーを独占する時代は終わり、山奥の農家が発電する時代が到来した。田んぼでスマホや電気自動車を充電するという、のどかな風景が鳥取県内に広がるだろう。

【参考】
2021年3月・全国初の微生物発電~鳥取市鹿野町で

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