【はじめに】
本レポートは、2027年度に向けた国の予算編成方針の劇的な変化(概算要求の過去最大更新および補正予算依存からの脱却方針)を踏まえ、鳥取県建設業協会と鳥取県技術企画課による座談会(2026年8月21日開催)における議論を改めて分析し、2027年における鳥取県建設業の展望、直面する課題、および目指すべき方向性を総合的に考察したものである。
1. 国の2027年度予算概算要求の動向とマクロ経済環境
財務省が2026年8月31日に締め切った2027年度予算の概算要求は、一般会計総額が約143兆円に達し、4年連続で過去最大を更新した。
■ 主な変動要因および特記事項
・「責任ある積極財政」投資枠の創設:
新設された上限なしの投資枠に10兆円を超える要求が殺到し、全体を大きく押し上げた。
・国債費の上昇:
長期金利の上昇を受け、想定金利が前年度の3.0%から3.8%へと引き上げられ、国債費は36兆6,386億円へと増大した。
・主要省庁の要求額:
厚生労働省が36兆5,803億円、防衛省が8兆8,908億円を求めており、事項要求を含め最終予算案はさらに膨らむ見込みである。
・予算編成手法の根本的転換:
近年拡大していた補正予算(2025年度補正:18.3兆円)の経費を、あらかじめ当初予算に本格導入する方針へと転換。従来の「15か月予算」的な補正依存体質からの脱却を目指している。
2. 鳥取県建設業協会の要求と地域の現状・課題
地域建設業は単なるインフラ整備にとどまらず、地域雇用の受け皿や、局地化・激甚化する自然災害における応急復旧・減災活動の担い手として極めて重要な社会的役割を果たしている。
■ 建設業協会の主要要望事項
(1) 5年・10年先を見通せる計画的な資本整備の推進と十分な発注量の確保
人材確保や機材・設備への継続的な投資を可能とする経営環境の構築。
(2) 発注平準化の徹底
繁忙期と閑散期の極端な高低差を解消し、年間を通じた安定的な稼働率の維持。
■ 現場の懸念(補正予算廃止・当初予算化に伴う「空白期間」のリスク)
国の予算編成方針の転換により補正予算が抑制され、当初予算へ集約されることで、国の箇所付けが3月末頃へとずれ込む懸念が生じている。従来は6月議会後の増額補正等で前倒し発注(15か月予算の活用)が行われていたが、当初予算メインへとシフトすることにより、新年度上期(年度当初)の工事着手や予算執行において大規模な「空白期間」が発生するリスクが危惧されている。
3. 鳥取県の対応方針と技術企画課(中口寛課長)の回答
鳥取県は、令和5年台風7号での甚大な被害からの早期復旧(約3年での機能回復)などを背景に、建設産業の技術力・組織力の重要性を強く認識している。
■ 鳥取県の具体施策と回答方針
(1) 公共事業予算総額の確保に向けた国への積極要望
人件費の上昇や資材価格の高騰を適切に反映させた予算額の確保のため、国土交通省や国会議員への要請活動を継続実施(8月6日にも実施済み)。
(2) ゼロ県債・ゼロ国債の積極的活用
年度当初の空白期間回避に向け、前年度中に予算枠を確保して早期発注を可能にする「ゼロ県債」「ゼロ国債」を活用し、平準化と連続的な事業執行を図る。
(3) 既存予算の確実な執行
令和7年度国補正分や過年度当初予算の確保分を含め、途切れのない事業執行管理を行う。
4. 2027年における鳥取県建設業の展望と提言
2027年に向けて、鳥取県の建設産業が持続可能な発展を遂げるための展望と対応策を以下にまとめる。
■ 今後の展望
国の予算枠組みが「補正依存」から「当初予算重視」へとシフトする中で、全体としての公共事業予算額は確保されやすくなる反面、発注のタイミングが特定の時期に集中する恐れがある。鳥取県によるゼロ県債等の制度運用が実効性を持つかが、地域建設業の経営安定度を左右する鍵となる。
■ 達成すべき重点施策
1. 制度的平準化の高度化:
ゼロ県債・ゼロ国債の枠組み拡大と柔軟な工期設定(施工枠の適正化)を推進し、年度端境期の稼働率低下を完全に防ぐ。
2. 計画的インフラ投資の可視化:
県と業界が中長期の中立的ロードマップを共有し、5年・10年先を見据えた人材育成・DX投資(ICT施工、自動化技術の導入等)を強力にバックアップする環境を整える。
3. 適正な単価改定と労務費の確実な還元:
物価スライド条項の適切な運用とインフレに応じた予定価格の適正化を推進し、現場で働く技能者の賃金引き上げ・労働環境改善へと繋げる。
捕捉 令和8年8月21日、鳥取県建設業協会と県土整備部意見交換会
~県協会要望と中口寛技術企画課長の回答
議題1:地域インフラを支える発注量の確保と持続可能な事業環境の構築について
【建設業協会からの要望】
県内建設業は地域雇用の受け皿となり、防災活動を担い続けています。その役割を将来にわたって果たしていくためには、人材や設備への投資ができる環境が不可欠です。
そのため、以下の2点を要望します。
1. 5年、10年先の事業の見通しが立つよう、計画的な資本整備の推進と十分な発注量の確保をお願いしたい
2. 繁忙期・閑散期の差をなくすため、発注の平準化を徹底してほしい
【技術企画課・中口寛課長の回答】
近年、千葉県の浸水被害をはじめ、自然災害は局地化・激甚化しており、技術力と組織力を生かした応急復旧や被災施設の速やかな復旧、機能改良を通じて地域の社会経済活動を支える建設産業の役割は、今後も重要であると認識しています。
なかでも、令和5年の台風7号では鳥取県東部・西部で甚大な被害を受けましたが、皆様のご尽力により、約3年で元の姿に戻すことができました。こうした経緯を踏まえ、鳥取県では防災・減災対策やインフラ老朽化対策など、国土強靭化対策を効果的かつ計画的に推進するため、事業の計画化を十分に考慮し、年間事業量の確保に取り組んでいます。
具体的には、
〇人件費や物価上昇を勘案した上で、公共事業予算の総額確保を国に積極的に要望している(8月6日にも国土交通省・国会議員へ要望を実施)
〇ゼロ県債・ゼロ国債の積極的な活用などにより、発注の平準化を引き続き推進していく
~という方針です。
【質疑応答】
■建設業協会
これまで県では、補正予算の活用やゼロ県債・ゼロ国債の活用により、前倒しできる工事を極力前倒しして平準化を図ってきたと認識しています。しかし、冒頭の吉野部長のご挨拶にもあったとおり、今後は補正予算がなくなり、当初予算も国の箇所付けが年度末(3月)頃になる見込みです。
これまでは増額補正の箇所付けが6月議会後というスケジュールでしたが、当初予算からのスタートとなると、年度当初の工事着手や予算執行にかけて「空白期間」が生じるのではないかと懸念しています。この点についての見解を伺いたい。
【中口課長】
これまで国の補正予算は、次年度当初予算の前倒し、いわゆる「15か月予算」として活用されてきました。しかし、現政権の予算編成方針として「補正予算ありきではなく、当初予算から確保していく」という方向性が示されており、今年度の補正予算がどうなるかは現時点で明確ではありません。
従来、補正予算で前倒し対応できていたものが、本来の当初予算に戻っていくという捉え方もできますが、これまで活用できていた前倒し手段がなくなるというご懸念はそのとおりだと受け止めています。
県としても、ゼロ県債などをこれまで同様に活用し、可能な限り空白期間が生じないよう取り組んでまいります。なお、令和7年度予算の国補正分と今年度当初予算は、いずれも確保された上で現在事業執行を進めている段階であり、それらも含めて平準化への対応を図っていきたいと考えています。