国土交通省鳥取河川国道事務所は、令和8年度事業計画で「一般国道29号津ノ井バイパス(広岡〜西大路)」の事業費として3億円を計上し、地質調査や橋梁・構造物設計を推進することを決めた。長年の渋滞解消と地域経済活性化を目指す本事業は、隣接する八頭町をはじめとする東部圏域にとって悲願の決定である。本誌は、事業化に至る劇的な経緯と、連携する周辺バイパス構想、さらに八頭郡全体の道路ネットワーク課題について検証する。
1. 津ノ井バイパス(広岡〜西大路)の事業概要
一般国道29号津ノ井バイパス(広岡〜西大路)は、鳥取市広岡から鳥取市西大路に至る延長2.8kmの道路整備事業。同区間周辺には鳥取市南部の主要な工業団地(津ノ井工業団地、若葉台工業団地等)や住宅団地が密集しており、朝夕を中心に著しい交通渋滞が発生している。
事業の主な目的は、交通混雑の緩和、交通安全の確保、さらには救急医療活動の支援である。周辺には電気機器やIT、製造業の先端技術開発を行う企業が立地しており、4車線化による物流の円滑化と地域産業の活性化に大きな期待が寄せられている。
【令和8年度 事業概要】

路線名:一般国道29号 津ノ井バイパス
事業区間:鳥取県鳥取市広岡 〜 西大路
延長:2.8 km
令和8年度予算:3.00 億円(前年度 2.05億円 / 伸率1.46)
令和8年度事業内容:地質調査、橋梁設計、構造物設計等
※7月13日に地質調査3件が開札され、西谷技術コンサルタント、エスジーズ、ワーパスが受注した。
2. 「単なる混雑」からの転換~令和7年度事業化への執念
この津ノ井バイパス4車線化事業の着手は、隣接する八頭町にとって長年の懸案事項であった。今から10年ほど前、八頭町が同区間の4車線化を国に強く要望した際、国は「津ノ井地区の渋滞は単なる混雑」と回答。国としては2車線の高架化を行えば混雑は解消すると試算していたのである。
しかし、この国の見解に対し当時の吉田英人八頭町長は真っ向から異議を唱えた。「2車線の高架化では建設コストが甚大になり、整備期間も著しく長期化してしまう。高架ではなく平面交差で構わないので、早期に改良してほしい」と粘り強い要望活動を継続した。
その後、隣接する県道若葉台東町線でも渋滞が深刻化したことを受け、鳥取市、八頭町、若桜町の1市2町が結束。共同で国や鳥取県に対して強力な事業化要望を展開した結果、国も姿勢を改め、令和7年度から整備計画が本格的に具体化することとなった。
■2023年10月27日:国道29号津ノ井バイパス整備 鳥取市・八頭町・若桜町が知事に要望書
3. 八頭町内のバイパス構想と慢性的な渋滞問題
また八頭県土整備事務所や八頭町では、津ノ井バイパス整備と連動する形で、鳥取市若葉台から八頭町郡家(郡家警察署付近)までのバイパス化について、過去に独自検討を行っていた。
当時の具体的なルート案:
① 郡家東小学校ルート:郡家東小学校付近からJA選果場の東側を通り、郡家中央公民館を経て郡家警察署付近の国道29号に接続するルート。
② 広岡ルート:広岡交差点から堀越集落を経て郡家駅西側の住宅団地付近に接続するルート。
これらのバイパス構想は最終的に具体化には至らなかったものの、八頭町内を縦貫する国道29号の慢性的な交通渋滞は依然として解消されていない。町の持続的な発展と住環境の向上のためには、今後も何らかの抜本的な改善策が不可欠とされている。
4. 西御門〜若桜間の改良要望と「ゆずりゾーン」
さらに、八頭町西御門から若桜町に至る国道29号の区間についても、地域住民から抜本的な道路改良を求める声が根強く存在している。数年前には若桜町議会において「国道29号にゆずりゾーン(避譲車線)を設置してほしい」との決議が可決された経緯もある。
同路線は、観光客に利用される主要な観光道路であると同時に、物流や地元住民の日常の生活道路や農作業車の移動経路としても日常的に活用されている。特に高齢化が進む八頭郡内においては、低速な農作業車や高齢ドライバーの運転に配慮し、安全かつ円滑に追い越しが行える「地域のお年寄りに優しい道路整備」が強く求められている。
5. 今後の展望:令和8年秋の本格協議へ
令和8年秋には、八頭郡3町(八頭町・若桜町・智頭町)と八頭県土整備事務所が、管内道路網全体の整備に関する本格的な協議を開始する予定。津ノ井バイパスの着手を追い風に、郡家バイパス構想の再整理や「ゆずりゾーン」の設置を含む実効性の高い道路整備プランについて、一層活発な意見交換が行われることを期待している。