鳥取市令和6年12月定例会に、農地管理組合を脱退した者から、農村整備課の事務処理に対して調査依頼があった。その概要を以下に掲載することにした。
農村整備課の事務処理について検証を求める陳情(令和6年11月15日付)
鳥取市野坂 吉田啓次郎ほか7名
1.陳情趣旨
野坂農地水路保全管理組合(以降、管理組合)は令和3年度に発足し、多面的機能支払交付金を活用して当集落の農地や水路などの保全に資するものと期待されたが、翌4年度に10名の脱退者を出す(発足時の構成員数の約1/3)。
これを受け管理組合は、脱退者に対して、別添1の書面:により、脱退者の耕作地の適切な保全管理を約束する旨の「念書」を提出させ、その上で、農村整備課はこの「念書」を根拠に脱退者の耕作面積分の交付金を脱管理組合に交付している。私たちの調べでは、今年度の交付額は30万円余りに上る。
脱退の理由はそれぞれで、例えば管理組合の組織運営に対する疑問や自身の健康上の問題などだが、これら個々の見解や事情はさておき、脱退に伴う農村整備課の事務処理は、以下で述べるとおり、同交付金の要綱等に照らして必ずしも適切でなく、また、慎重を欠くものと思われるので、検証していただくよう陳情するものである。
2.陳情理由(文書内の丸数字は脚注を示す)
多面的機能支払交付金は、地域の活動組織が行う農地維持活動②や資源向上活動③を支援するもので、本市においても百を超える組織がこの交付金を受け、それぞれの地域で農業生産基盤の保全管理を実施している。
なお交付金の算出にあたっては、組織が保全管理する農地面積に一定額の交付単価を掛けて算出する④。
脚注②と③で示すとおり、組織の共同活動に着目して交付金を支払うという事業の性質上、その活動は構成員の合意に基づいて計画・実施されなければならないと思われる。しかし農村整備課は、非構成員である脱退者が行う保全活動を、「念書」を根拠として管理組合の活動と見なし、非構成員の耕作地を管理組合の保全管理区域に残したまま、交付金を支出している。これが多面的機能支払交付金の趣旨に沿った事務処理といえるか否か、これが検証していただきたい問題の一点目である。
二番目の問題点は、この「念書」が取られた方法に係わるもので、すなわち、脱退者は別添1の書面により、
①脱退者は管理組合の活動期間中、自身の耕作地を適切に保全管理するか
②脱退者の耕作面積分の、これまでの交付金額相当額(令和3・4年度分)を返還するかどちらかを選ぶ内容。例えば、別添1の書面を受け取った耕作者は、16万円余りを管理組合の口座に振り込むよう求められており、自ずと一つの選択肢しか残っていないと思われる。
同交付金の要綱では、高齢化等やむを得ない理由以外の理由で、保全管理する農地面積が減少した場合、市町村は活動組織に対して、活動期間の初年度に遡って交付金返還を求めることと規定されている。
鳥取県の調査によれば⑥、当時、管理組合の代表から農村整備課に対して、構成員が脱退した場合の取り扱いについて問い合わせがあり、脱退者の耕作地を管理組合の保全管理区域から除外する場合は交付金の遡及返還の必要があること、ただし、当該耕作地において継
続的に保全管理が行われていれば除外しなくてもいいと伝え、その上で、除外しない場合は当該耕作者が構成員ではなくなるため、 トラブル防止のために十分な話し合いをし、それを記録で残しておくことを伝え、それが結果として、農村整備課に対する「念書」の提示につながったとされる⑧。
こうした実態を知った脱退者有志と支援者は、令和6年3月以降、農村整備課に対して、
(1)農家が普段から畦草刈り等を行い、自身の耕作地を適切に保全管理することは農家として当然であること
(2)そうした普段の活動で交付金を返還しないで済むなら、役所の関与をうかがわせる記述もあることであり、「念書」の提出はやむを得ないと考えたこと⑨
(3)そもそも「念書」が上記の目的に使われることや、脱退以降も自身の耕作地面積分の交付金が出ていることを聞かされていないこと
~を訴えてきたが、農村整備課は、事情がどうであれ「念書」は有効であり、それに基づいて交付金を支出することに問題はないという立場を崩していない⑩。
いうまでもなく行政の事務処理に当たっては慎重な姿勢が求められ、国費の入る事業なら尚更である。ではなぜ同課は「念書」のみで「十分な話し合い」がなされたと判断したのか⑪。
たとえ「念書」があったとしても、非構成員の活動を組織としての活動とみなし、交付金を支払うことは、ほとんど例にないことであるから、脱退者がどのように納得し、同意したかを確認すべきではなかったか。
例えば、脱退者との協議内容を記したメモの提出を求めたり、話し合いの様子を聞き取ったりするなどの対応が併せてなされていれば、危惧されていた「トラブル」を防ぐことができたのではないかと思われる。
そもそも、脱退者らがこうした実態を知ったのは、令和6年の当初、たまたま集落にもう一つ別の活動組織をつくる運びとなり、交付金の算定基礎となる農地面積を集約していた時のことであった。たまたま、ある脱退者の耕作地をその農地面積に加えようとして、念のため農村整備課に照会したところ、担当者から、その耕作地は管理組合の保全管理区域から除かれておらず、交付金も出ているため、新組織に移行することは困難との指摘があったためである。
脱退者は非構成員であるため交付金の恩恵を受けられず、また総会等に出席できないため、交付金がどのように使われているかも知らない。もっとも今となっては、脱退者は管理組合からなにがしかのものを得たいとは考えていない。脱退者の思いは、自分たちの普段の労苦の結果得られるものを勝手に使われたくないという一点である。その上で、新組織に加入を希望する者はそう出来れば良いのだが、残念ながらそれも困難な状況にある。
【脚注】
② 「対象組織が行う、地域共同による農用地、水路、農道等の地域資源の基礎的な保全管理活動及び地域資源の適切な保全管理のための推進活動」と定義(多面的機能支払実施要綱別紙1の第1)
③ 「対象組織が行う、地域共同による施設の軽微な補修及び農村環境の保全のための活動等の地域資源の質的向上を図る共同活動並びに老朽化が進む農業用排水路等の長寿命化のための補修。更新等の活動」と定義(同要綱別紙2の第1)
④ 同要綱別紙1の第6及び別紙2の第6
⑤同要綱別紙1の第9の2及び別紙2の第9の2
⑥R6年4月10日付「県民の声(ご回答)」
⑦高齢化等やむを得ない理由以外の理由で、活動組織の保全管理面積が減少した場合は遡及返還となるのが原則ではあるが、返還にあたっては、次年度以降の交付金を減額して返還金額を相殺できることとされている。「(市町村は)当該年度以降の交付金の交付
の際に、当該返還相当額を相殺し、交付することができることとする」(同要領第1の15の(2)のア及び第2の19の(2)のア)
したがって、構成員が減れば、その分、組織の事業規模も縮小するため、遡及返還になるとはいえ、実際の活動への影響は限定的と思われる。農村整備課の担当は、そうした取り扱いが可能な旨を併せて管理組合の代表に伝えたと証言しているが、「念書」を求める書面にはそんな記述は見当たらない。
⑧何人かの脱退者は、健康上の理由で脱退を申し出ている。この場合、その耕作地が自身の所有地などの理由で、他の構成員が代わって管理できなければ、活動組織は計画変更を行い、保全管理区域から当該脱退者の耕作地を除く。こうしたやむを得ない理由による面積減は還を免除されることとなっている(同要領第1の15の(1)及び第2の19の(1))。
しかしながら、管理組合は当該脱退者からも念書を求め、交付金を引き続き受け取っている。なぜこうした取り扱いをしたのか、その理由は不明である。
⑨活動組織が構成員に対して、返還金相当額を求めてよいかどうかについては特段の定めはない。しかし例えば、活動組織がかねてから、耕作地を宅地などに転用した場合は遡及返還になると周知していたとして、それにもかかわらず、構成員が転用したというケース
はどうか。もし、その返還(収入減)によって今後の事業計画に支障があると組織が判断した場合は、構成員に対して返還金相当額を求めることは許容されるかもしれない。しかし、今回の場合、脱退者にそれほどの落ち度があったとは思えない。
⑩R6年4月5日農村整備課長との協議における課長の発言。なおこの時、同課長は別添1の書面について関与を否定している。
⑪農村整備課の担当者は次のように述べている。「脱退者に説明したうえで覚書を交わすと[代表者に]言われていて、変更の計画書が提出されていなかったので、同意が得られているという認識でした(R6年3月28日付メール)」