土木情報 計画・構想

鳥取県土 大路川河川改修と流水管理最適化、砂田川JR橋架替え事業計画(現状報告)

投稿日:2026年06月14日 11:06 更新日:

 鳥取県土整備事務所と鳥取市は、近年激甚化する気象災害に対応するため、「大路川改修事業の促進」と「左岸流域における流水管理のデジタル化(DX)」を緊密な連携のもとで進めている。
 また浸水被害の軽減と治水安全度の向上を目指したJR因美線橋梁の架替え事業もいよいよ本格化する。問題解決に向けた課題や問題点など現状を報告する。

1. 大路川・砂田川の河川改修事業の促進

 大路川米里工区(中大路橋~念仏橋間)の河川改修について、これまで実施してきた河床掘削等による水位低下効果を確認しつつ、接続する支川・砂田川の河川改修(JR山陰本線鉄道橋の架替え工事)の完了後に本格着手する予定。令和8年度は、このJR橋架替えに向けた工事用道路や施工ヤードの整備といった仮設計画を中心に、地元住民等との合意形成を図りながら事業を推進する。

2. 左岸流域における流水管理の課題とDX(見える化)の推進

 大路川の左岸流域(清水川や山白川など)には、県管理河川のほか大小さまざまな水路が張り巡られており、樋門・排水機場の操作により分水し流域を流下させている。

 これまで、以下の課題に直面した。

■同時稼働の限界
 豪雨時に各排水機場から大路川へ強制排水を行う際、流域全体での流水バランスが最適化されていないため、すべてのポンプが同時に100%の能力を発揮できないケースがあった。

■運用の不安
 現地の樋門操作員や管理者が下流側の水位や他施設の稼働状況をリアルタイムで把握できず、操作ルールのみに依存した手探りの運用を行わざるを得なかった。

対応手法
 これらの課題を解決するため、令和5年度より流水管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた検討がスタートした。
具体的には、用排水路の水位、樋門・水門の開閉状態、排水機場の稼働状況をセンサーやカメラでリアルタイムに計測し、WEB環境を通じてPCやスマートフォンから一元的に「見える化(遠隔監視)」するシステムを構築する。

 これにより、各管理者が流域全体の情報を共有した上で最適なタイミングで樋門操作やポンプ運転を行い、流域全体の排水効率を最大限に高めて浸水被害の大幅な軽減(内水氾濫対策)を目指す。

3. 今後の方向性と地域連携

 今後は、適切な観測機器のさらなる設置と監視システムの構築を進めるとともに、将来的な自動化や最適運用の指針策定を構築する。また近年の台風による増水実績を踏まえ、豪雨時に現地で従事する操作員の安全確保(退避基準の策定など)についても、住民避難計画と連動させる形で鳥取市と鳥取県が緊密に協議を重ね、ソフト・ハード両面から地域全体の防災力を強化していく方針です。操作員が住民より先に逃げるわけにもいかず、このあたりのタイミングをどうするのかが重要な課題だ。

砂田川JR因美線橋梁架替え

 一級河川千代川水系の大路川支川である「砂田川」において、浸水被害の軽減と治水安全度の向上を目指したJR因美線橋梁の架替え事業が本格化している。令和8年5月22日に開催された鳥取市都市整備部と鳥取県土整備事務所との意見交換会において、現在の進捗状況や今後の仮設計画、および地元住民との合意形成に向けた見通しが共有された。

過去の甚大な浸水被害が背景

 砂田川流域では、昭和51年や昭和54年、平成10年など、度重なる浸水被害に悩まされてきた。特に昭和54年の大雨では、大路川流域全体で浸水面積445ha、床上浸水329戸、床下浸水218戸という激甚被害を記録した。

 大路川流域の約22%は住宅が密集する市街地であり、市立病院や大規模小売店舗が多数立地しているほか、関西圏との交流の要であるJR因美線も通過する。万が一の洪水発生時には極めて大きな社会的・経済的損害が想定されるため、JR橋の架替えによる河川断面の拡大と流下能力の向上が急がれている状況だ。

厳格な工程管理と令和15年度の完成見通し

 本事業の大部分はJR西日本への委託による改良工事となるが、JRが実施する他の工事との調整が必要不可欠となる。そのため、以下のマイルストーンを厳守する計画で進められている。

令和8年度(現在)
〇工事用道路および施工ヤードの整備(秋以降の収穫後を予定)、工損事前調査、用地調査、中国電力の支障物件移転、住民宅やJR橋梁下流側の用地補償などを推進。

令和9年度~
〇JR委託工事に着手し、下流側の仮設工を開始。

令和10年度
〇軌道工事を除く仮線施工(盛土、ボックスカルバート等)や、ソフトバンクのケーブル移転、上流側の用地補償などを実施。

令和11年度
〇仮線路への切替えと軌道振替を実施し、上流側の仮設工へ移行。

令和14年度
〇本線路への切替え完了。

令和15年度
全工事完成予定。

東大路地区との合意形成と覚書締結へ

 工事着手にあたり、地元の東大路農事実行組合から「営農への影響やインフラ整備に関する多数の要望」が寄せられている。これらに対し県は、JRの工事工程に遅れが生じないよう、令和8年8月中までに地元と覚書を締結する予定で調整を進めている。

【地元からの主な要望内容】

①農業用インフラの復元と更新
 農道や用水路の復元について、鳥取市の担当部署と組合が立ち会った上で合意形成を図ること。また特定水田地番(杉崎など)の用排水路の再整備や、水田の樋門更新、堰板の張替え、水口ヒューム管の埋設配管などの実施。

②工事期間中の柔軟な対応
 農繁期における工事の一時中断要請へ対応し、車両退避場の路盤整形に砕石を使用しないことなどの配慮を求めた。

③維持管理への支援
 大路川・砂田川の農地側堤防ののり面、および遊水地周辺農道の草刈りを、県が毎年2回実施すること。

【県対応】
 鳥取県土整備事務所は、これらの農業用施設に関する地元要望について、鳥取市農村整備課と緊密な連携・調整を図りながら適切な回答を行い、円滑な事業推進を目指す。

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