令和8年6月、鳥取県企業局が運営する3つの主要事業(電気事業、工業用水道事業、埋立事業)の令和7年度決算が出そろった。一部地元紙などで「厳しい財政状況」が指摘されているが、実態はどうなのか。
各事業の現状と、令和8年度以降の「生き残り戦略」を調べてみた。
1. 電気事業:台風被災から復活も、約6.5億円の純損失
まずは主力である電気事業だが、令和7年度の損益は当年度純損失 6億4,529万円(赤字)となり、前年度との比較では、純損失(9億3,300万円)から約2億8,800万円の黒字化(赤字幅縮小)となった。
なぜ赤字なのに「改善」したのか?
令和5年の台風7号で被災した佐治発電所や、機器故障で停止していた袋川発電所、新幡郷発電所が順次運転を再開したため。これにより販売電力量が前年度比で280.1%と大幅に増加し、売電収入が増えた。
しかし、運転再開に伴う修繕費やダムの浚渫工事、減価償却費などの「営業費用」が28億6,200万円に膨らんだため、依然として大きな赤字を残している。累積の「当年度未処理欠損金」は約23億4,700万円に達しており、これを地元紙は「厳しい」と指摘した。
今後の見通し
令和8年度は鳥取放牧場風力発電所の撤去などで一時的に赤字が続くが、令和9年度以降はコンセッション(運営権売却)による収入や発電所の完全復旧により、黒字化して安定経営が確保できる見込み。現金預金も必要最低額(5.1億円)を大きく上回る水準をキープする計画だ。
2. 工業用水道事業:大口離脱で赤字拡大、令和11年に「値上げ」へ
次に、地域の工場などに水を供給する工業用水道事業だが、令和7年度の損益は1億2,401万円の赤字。前年度との比較では純損失(5,300万円)から、7,100万円の赤字拡大となった。
なぜ赤字が拡大したのか?
バイオマス発電への新規給水が始まり契約水量自体は増えたものの、施設の渇水対策や水管橋の塗装工事といったメンテナンス費(委託費や修繕費)が大きくかさんだため。さらに令和8年度以降、大口ユーザーの事業廃止による減量が見込まれている。これにより収入(給水収益)がさらに減るピンチに直面している状況だ。
今後の生き残り策として値上げと民間活力の導入が示唆されており、経営に必要な現金(必要最低額0.9億円)は確保できる見通しだが、持続可能な経営のため、令和11年度に料金改定(日野川地区+5円、鳥取地区+3円)を予定している。また、コスト削減に向けて民間活力の導入(アウトソーシングなど)の検討も始まっている。民間活力導入という外注がここでも具体化するようだ。
3. 埋立事業:県営工業団地は「完売」、唯一の黒字を維持
最後に、工業団地などの造成を行う埋立事業をみると、令和7年度の損益は当年度純利益 7,392万円(黒字)となった。竹内工業団地で新規分譲が2件あり、県営工業団地の未分譲地は「完売」した。
過去の「負の遺産」も
損益計算書上、累積で約40億円の未処理欠損金があるのだが、これは平成26年度に会計ルールが変わり、土地の価値を「時価」へと変更した際に発生した評価損(約52億円)が原因。実際の現金が流出したわけではない。
今後の見通しだが、工業団地が完売したため、過去の割賦販売(ローン)の代金回収や長期貸付による安定した収入が入る。一般会計から借りている約20億円の借入金も、これらの収入で順調に返済できる見通しで、3事業の中で最も安定した事業となった。
施設マネジメントの総括:危機的状況か、それとも「生みの苦しみ」か?
地元紙が「厳しい」と指摘する背景には、「電気と工業用水の2事業が同時に1億円〜6億円規模の純損失を出していること」、そして「過去からの累積赤字(欠損金)が巨額であること」にある。
しかし、データを細かく見ていくと、ただ衰退しているわけではない。
①電気事業=災害・故障からの復旧投資が終われば、令和9年から黒字化のフェーズに入る。
②工業用水=大口撤退という逆風に対し、令和11年の料金改定と民間委託で先手を打つ。
③埋立事業=完売により、今後は確実なキャッシュの回収期間に入る。
いずれの事業も、手元の「現金預金」は企業局が定めた必要最低維持額をクリアする計画となっており、すぐに資金ショート(倒産)するような危険な状態ではない。
現在は、インフラの災害復旧や維持管理のための「投資がかさむ時期」いわゆる生みの苦しみの時期であり、今後は令和9年度の電気事業黒字化や令和11年度の水道料金改定などを経て、経営の健全化を進められるかが正念場となりそうだ。