計画・構想

八頭県土 3町維持管理を協同事業化~地域インフラ群再生戦略マネジメントとは

投稿日:2026年07月14日 12:24 更新日:

 令和8年6月から7月にかけて、八頭県土整備事務所と若桜町、智頭町、八頭町の意見交換会が開催されたのだが、その3町すべてで「今後の地域インフラのあり方を占う重要な議題」が提示された。それが、八頭県土整備事務所計画調査課から提示された「インフラ維持管理における県・市町村の協同事業化等の検討について」だ。

 背景にある深刻な「担い手不足」から、国が推進する「地域インフラ群再生戦略マネジメント(通称:群マネ)」を取り入れた具体的な戦略、その目的と動向、今後のスケジュールまで調べてみた。

1. なぜ「協同事業化」が必要なのか?

 現在、県民の豊かな社会経済活動を支える土木インフラの機能・性能維持は重要な課題となっている。しかしその一方で、インフラを支える自治体(県・市町村)側では、土木行政に携わる職員の高齢化や、新規採用者が定員に達しないことによる「深刻な職員不足・技術系職員不足」に直面している。

 実際に八頭地区の3町(若桜町、智頭町、八頭町)の現状を確認したところ、以下のような共通の課題や懸念が浮き彫りになった。

①予算や人員の不足により、日々の道路などの巡視や修繕が十分にできていない。

②将来的に、集落内の道路除雪などできめ細やかな対応が難しくなるのではないかという懸念。

③県が持つ便利なデジタルシステムに興味はあるものの、町が負担するシステムの費用(負担額)がネックになっている。

 こうした職員不足を乗り越え、未来に向けてインフラを適切に維持していくためには、従来の自治体ごとの枠組みを超えた「業務の効率化」や「協同事業化」が不可欠と結論づけた。

2. 目指す手法と「群マネ(地域インフラ群再生戦略マネジメント)」

 この課題を解決するため、鳥取県が推進しているのが「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」の手法だ。

 「群マネ」とは、限られた技術系職員でも的確なインフラメンテナンスを確保できるよう、複数の自治体や複数の分野のインフラを一つの「群」として捉え、効率的・効果的にマネジメントする仕組みのこと。
 具体的には、以下のような方向性での検討が進められている。

① 管理者の枠組みを超えた役割分担・一括発注
 これまで県道は県、町道は町と別々に発注していた業務を、地域のリソースに応じて包括的に委託したり、一括発注する。すでに先行事例として、山間部の狭い県道や行き止まりの多い県道の除雪を町に委託して、町道と一体的に除雪する試みや、日野地区のように3町で除雪業務を一元化して共同処理する仕組み(鳥取方式)が実績を上げており、今後は道路維持管理や河川など、他のインフラ分野へも拡張していくことを想定している。八頭県土では令和8年9月に共同事業化検討会を開催する方針だ。

② 県が運用する先進システムの市町村展開
 県が開発・運用している先進的なGIS(地理情報システム)などのデジタルツールを市町村も共同利用することで、業務を劇的に効率化する。検討されている主なシステムは以下の通り。

〇道路パトロール支援システム=紙や電話で行っていた点検・補修指示・進捗管理をデジタル化し、地図上で一元管理・共有するシステム。これにより帳票作成などの時間を短縮できる。

〇路面振動収集システム=公用車に小型センサーを搭載し、走りながら路面の異常(振動)を自動で計測・判定するシステム。

〇橋梁維持管理支援システム=橋の点検や診断、補修の経緯を一元管理するデータベースの構築。

〇災害調査システム=大きな災害が起きた際、被災現場でタブレット等を使って被害状況(位置、写真、情報)を登録し、現場・事務所・コンサルタント間でリアルタイムに情報共有するシステム。

③ 大規模災害時における連携調査体制の構築
 災害が発生した際、県と市町村がバラバラに調査を行うのではなく、連携して一体的な災害調査を行える体制を構築する。

3. 協同事業化がもたらす「未来の姿」

 この取り組みが進むことで、地域には大きく2つのメリットを期待できる。

1. 自治体側のメリット(予防保全型の構築)
 デジタルシステムの導入や業務の集約により、職員が現場対応や書類仕事に追われる時間が削減できる。その結果、インフラ管理者として本当に必要な「中長期の計画やマネジメント」に注力できるようになり、壊れてから直すのではなく、壊れる前に手を打つ「予防保全型のメンテナンスサイクル」が作成できる。

2. 事業者側(地元建設業)のメリット(魅力的な産業へ)
 複数年契約や包括的な発注など、業務のロットがまとまることで維持管理業務の収益性が向上し、地域のインフラを支える地元建設業の経営安定や体制確保につながる。

4. 今後のスケジュール

 令和8年5月に開催された「企画調整会議」を皮切りに、検討は以下のようなスケジュールでスピーディーに進行中だ。

①令和8年6月〜8月=本庁ワーキンググループ(WG)等による具体案や試行案の検討。

②令和8年7月〜8月=再び「県・町企画調整会議」を開催し、具体的な試行案を策定。

③令和8年9月=首長(町長ら)への説明を想定した「協同事業化検討会」を開催。

④令和8年9月以降=令和9年度に向けた予算要求。

 これまでに、
①道路パトロール支援システム(R4年度運用開始)
②路面振動収集システム≪第1期SIP(~ H30)に引き続きR4~鳥取大学で開発中≫
⑤オンライン電子納品システム(R6年度試行運用開始)
⑥異常気象時児童参集連絡システム(R6年度運用開始)
~を運用しているが、令和8年度から

③橋梁維持管理支援システム(R8~ 試行運用予定)≪
④災害調査システム(R8年度運用開始予定)
~について運用を開始する予定。

まとめ

 職員不足という全国共通の深刻な課題に対し、鳥取県と八頭郡3町は、行政の垣根を越えた「水平・垂直の連携」と「デジタル技術の共同利用」という創意工夫で立ち向かおうとしている。地域の安全・安心を次世代にしっかりと引き継ぐための、この新たな「鳥取方式」のインフラメンテナンスの挑戦に、今後も注目が集まりそうだ。

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