岩美町議会は27日に全員協議会を開会し、令和8年度9月補正予算案を明らかにした。その資料を見ると、この夏から秋にかけての物価高騰が、家計だけでなく自治体の財政運営そのものを揺さぶっていることがよく分かる。今回の補正は、まさに「値上げラッシュがこれからまた本格化する」ことを前提に組まれたものだ。
補正の中身
財源となっているのは「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」。令和7年12月16日決定分の交付限度額175,549千円のうち令和8年度への繰越分41,264千円と、令和8年6月5日決定分の交付限度額7,588千円をあわせ、以下の事業に充当する内容だ。
【公営企業会計への繰出金(25,662千円)】
水道・下水道・病院の各事業会計に対し、電気代や食材費の高騰分を穴埋めする。特に病院事業会計は17,979千円(電気代7,088千円+食材費10,891千円)と突出しており、電気代は令和3年度との差額、食材費は令和4年度との差額をそれぞれ算定根拠にしている。つまり数年前の水準からどれだけコストが跳ね上がったかを、そのまま行政が肩代わりする構図だ。
【生活困窮世帯等光熱費助成金(687千円)】
生活保護世帯や児童扶養手当受給世帯など160世帯を対象に、令和8年10〜12月分として1世帯4千円を支給する。事務費(郵送費・振込手数料)だけで47千円かかっており、決して大きな金額ではないが、それでも制度を回すための行政コストが発生している。
①物価高騰漁業者緊急支援事業(15,000千円)
漁業用燃油価格の高騰を受け、国の漁業経営セーフティネット構築事業加入者を対象に、漁協を通じて支援する。
【中小企業等特別金融支援事業(6,142千円、当初予算計上済)】
鳥取県の制度融資(地域経済変動対策資金)を利用した町内中小企業に対し、利子相当額を補助する仕組み。今回の補正では財源の組み替え(臨時交付金3,000千円増・一般財源3,000千円減)のみだが、これも物価高騰対応の一環として位置づけられている。
見えてくる構図
これらに共通するのは、いずれも「電気代」「食材費」「燃油価格」といった、生活や事業活動に不可欠なコストの上昇を、国の臨時交付金と町の一般財源を使って個別に埋め合わせているという点だ。しかも資料の冒頭に明記されている通り、この補正は**これから始まる新たな値上がり局面**を見込んで組まれている。つまり、物価高はすでに一巡した出来事ではなく、これから改めて自治体財政と生活困窮世帯を直撃する「進行中の問題」として扱われている。
消費税減税は何をもたらすのか
ここで素朴な疑問が浮かぶ。仮に消費税の2年間の時限的な減税が実施されていたとして、それは今回のような対策と何が違ったのか、という点だ。
消費税減税は理屈の上では、消費者が支払う税額を直接軽減し、物価上昇の影響を広く薄く相殺する政策とされる。しかし実際には、岩美町のような小規模自治体レベルで見えてくるのは、電気代や食材費、燃油価格といった特定コストの高騰に対し、交付金や補助金という形で「後から」「個別に」穴埋めをしていく対応の積み重ねだ。生活困窮世帯への光熱費助成にしても、対象は160世帯・1世帯あたり4千円という限定的な規模であり、消費税減税が謳うような「広く薄く」の効果とは性格が異なる。
仮に消費税減税が実施されたとしても、電気代や食材費、燃油価格といった特定分野の急騰には効果が及びにくく、結局は今回のような臨時交付金頼みの対症療法がさらに必要になる可能性を否定できない。
いずれにせよ、岩美町の補正予算案から読み取れるのは、物価高騰の影響が生活のあらゆる場面に個別具体的な形で現れており、それに対する行政の対応も、税制のような大きな枠組みではなく、電気代の差額計算や1世帯あたり数千円の助成金といった、極めて細かい単位で行われているという現実だ。消費税減税をめぐる議論が、こうした現場の実態とどこまで噛み合っているのか、あらためて問い直す必要があるのではないか。