令和8年6月12日、鳥取市議会は「鳥取市立地適正化計画の策定について」、都市整備部と協議した。今後さらなる人口減少による低密度化や、頻発・激甚化する自然災害への対応を背景に、持続可能でコンパクトな街の実現に向けた具体的な方針を検討するものだが、協議会では「鳥取市中心部に集中しすぎで、旧郡部の切り捨てになりかねない。これでは合併した意味が無い」といった厳しい指摘もあった。
本誌は、この鳥取市立地適正化計画の大きな特長を5つのポイントに整理した。
特長1:独自の「多極ネットワーク型コンパクトシティ」の追求
鳥取市は「鳥取市都市計画マスタープラン」に掲げられた将来像に基づき、単一の核に依存しない「多極ネットワーク型コンパクトシティ」を目指している。中心市街地を「中心拠点」とし、各総合支所周辺など(青谷、気高、鹿野、末恒、鳥大前、福部、国府、津ノ井・若葉台、河原、佐治、用瀬など)を「地域生活拠点」として設定 。これらを利便性の高い公共交通ネットワークでつなぎ、都市全体の利便性と市民サービスを維持する構造が大きな特長とした。
特長2:3つの定量的な指標による「拠点レベル」の見える化
住居や都市機能を誘導するエリア(誘導区域)を検討するにあたり、感覚的なゾーニングではなく、100mメッシュ単位で数値化する「拠点レベル」という独自の定量分析を導入した。具体的には、以下の3つの指標を偏差値化し、合計値を算出しています 。
1 将来人口分布(令和32(2050)年の予測)
2 都市機能施設へのアクセス性(商業・医療・福祉・文化・行政・避難施設などへの徒歩圏内施設数)
3 公共交通へのアクセス性(駅やバス停へのアクセス性)
この算出結果により、利便性が高く人口が集積しているエリアがマップ上に可視化され、より実効性の高い計画づくりを可能にした。

特長3:生活交通を重視した、きめ細かな「公共交通アクセス」評価
地方都市における移動手段を確保するため、居住誘導区域の選定において「公共交通の利便性」を極めて緻密に評価した。鉄道駅からの徒歩圏(800m)だけでなく、「1日30本以上運行される基幹的公共交通のバス停」および市街地を巡回する「くる梨」のバス停からの徒歩圏(300m)を居住誘導区域の重要な候補地として組み込んだ。車を持たない高齢者や子育て世代でも、安心・快適に生活を継続できる移動網と連動した工夫がなされている。
特長4:土地利用と調和した「メリハリのある区域設定」
都市の活力と住環境の調和を図るため、用途地域と連動したベースエリアの分析を行っている。
都市機能誘導区域(商業・医療・福祉施設などを集積)
拠点レベルが高く、中心市街地活性化基本計画の対象区域や「商業系用途地域」を含む範囲として明確に区分。一方で、住居系や工業系の用途地域は原則として除外する。
居住誘導区域(便利に生活できる住居エリア)
拠点レベルが暖色系から寒色系へ変化する範囲をベースとしつつ、工業専用地域や大学・山岳といった居住に適さないエリアを的確に排除し、都市の賑わいと居住効率を高めるメリハリのある計画とした。

特長5:災害リスクを直視した、現実的かつ厳格な「防災指針」の適用
近年激甚化する自然災害への対応として、安全性の確保と都市活動の維持を両立させる現実的な防災の方向性を設定した。
一切の誘導を行わない区域(除外): 災害危険区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)、津波災害警戒区域、家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流・河岸浸食)などは、人命を守る観点から厳格に誘導区域から除外した。
条件付きで誘導・維持を行う区域(緩和): 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)については「防災対策を推進すること」を前提に誘導を認める。また、1000年に1回程度とされる想定最大規模の洪水浸水想定区域(浸水深3.0m以上)は市街地の広範囲に及ぶため、すべてを除外するのではなく、内水氾濫のような比較的浅い区域(3m未満)については「垂直避難(上の階への避難)が可能」と総合的に勘案・判断し、都市の現実を見据えた条件付きの誘導を実施する。

まとめ
鳥取市の立地適正化計画は、単なる人口集約型のコンパクトシティではなく、地域の歴史や特性、既存の生活路線を活かした「多極ネットワーク型」である点が最大の強み。また、気候変動に伴う災害リスクの「除外」と「垂直避難などの許容」を明確に分ける姿勢からは、地方都市が直面する財政、利便性、そして安全性のトレードオフを乗り越えようとする強い意志が感じられる。
令和8年以降も各種素案の検討や市民の意見反映などを重ねながら、持続可能な都市経営とカーボンニュートラルの実現に向けて計画がブラッシュアップされていく予定。安心と活力の持続を目指す鳥取市の挑戦が、今後どのような発展を地域社会にもたらすのか。